「コーチングって何?」よくある3つの誤解【ポイントわかりやすく】

「コーチング」という言葉をよく聞くようになりました。インターネットでは「即日マスター!コーチングスキル」や「あなたもコーチになれる週末コーチング講座」といった言葉が飛び交っています。

しかしコーチングに関する情報は、玉石混交です。信頼の置けない情報も飛び交っているためか「コーチングって本当は何なの?」と疑問に思われている方も少なくないのではないでしょうか。この記事ではコーチングに関するよくある3つの誤解をご説明しながら、コーチングとは何なのかわかりやすくお伝えします。

目次

日本で広まる「コーチング」は誤解も多い

私自身はCo-Active Training Institute(CTI)という国際的なコーチ養成機関で2年間、コーチングを徹底的にトレーニングしました。このCTIのプログラムは国際的に最も権威のある国際コーチ連盟(ICF)に認定されており、普遍性のあるコーチングの考え方と実践スキルを提供しています。厳格な試験が課され、それをクリアした人に限りCPCCという国際的な資格を取得できます。

私は3月にこの国際的な資格を取得しました。プロの観点から、日本に広まりつつある「コーチング」に違和感を覚えています。特に多い3つの誤解をご説明していきたいと思います。

誤解1:人を管理するマニュアル会話スキル

「コーチングというと、どこか身構えてしまう」という声を聞きます。コーチングとは人を管理しコントロールするものという考えがどこかにあるのかもしれません。

コーチングを少しかじったことがある方がよくいうのが「GROWモデル」という考え方です。1990年代に欧州でビジネスコーチングを広めたジョン・ウィットモア氏が開発したものとされ、上司が部下に自発的に考えさせて行動させるために、気づきと学びのサイクルを回す管理スキルとされます。

簡易的なコーチングスクールの中には、このGROWモデルに限って習得するところもあるそうです。確かに「ビジネスで成果を上げる」という点では有効な考えなのかもしれませんが、これはかなり局所的で偏ったコーチングの捉え方です。

そもそも「上司が部下に自発的に考えさせる」という点に、大きな違和感を覚えます。コーチングとは、決して誰かを管理する手法ではありません。逆に、自己を解放するものです。

コーチングの最も基盤にある考えは「他者の視点が内面化されている人」を「自分の価値観で動く人」に変えることです。自らの内側にある生きる原動力を見つけ、自らの価値観をもとに仕事や人生を作り出す対話です。

一部で誤解されている「マニュアルに沿って型にはめる会話スキル」とは全く異なります。コーチングの本質は「心を解放する内省的な対話のダンス」です。

✖️ 人を管理するマニュアル会話スキル
⭕️ 人を解放する内省的な対話のダンス

誤解2:問題解決や目標達成が至上命題

2つ目の誤解は、コーチングはとにかく問題解決や目標達成をめざすものという考え方です。コーチングは横文字のため字面から「カチッ」としているイメージがあるからか、コンサルタントと同じように、とにかくビジネス上の問題解決のために使うものという認識もあるようです。

しかし、これも実は大きな誤りです。コーチングの対話は、クライアントが抱える問題に焦点を当てて解決することをめざすコンサルタント型のやりとりとは全く異なります。コーチは対話のプロであっても、問題解決のプロではありません。コーチングの対話によって結果的にクライアントの問題が解決することがあっても、コーチが焦点を当てるのは問題そのものではないのです。

コーチが焦点を当てるのは「問題」ではなく「その人自身」です。その人が問題だと考えていることに対して、どう捉えているのか、本当はどうしたいのかということについて掘り下げていきます。

人に焦点を当てて掘り下げていくと、必ず行き着くのはその人自身の価値観です。ひとつの出来事に対しても、人によって捉え方や感じ方が異なります。同じ経験をしても、ある人にとっては良い思い出かもしれませんが、ある人にとってはそうではないかもしれません。自分がなぜそう感じるのかについて深めていくと、その人ならではの大事にしたいことが見えてきます。

「自分のことは自分がよく知っている」という考えをお持ちの方もいるかもしれません。しかし、私自身のコーチングの経験を通じても「自分の価値観を、一人で見つけ切れる人」はほとんどいません。なぜなら、その人にとって、大事にしたいことは当たり前に身にまとっている空気のような存在だからです。

日常生活で空気の存在を意識している人はほとんどいないでしょう。その存在を意識できるのは例えば、自然豊かな場所に旅に出て、胸いっぱいに空気を吸い込んだときに「何か空気がおいしく感じる」というときではないでしょうか。日常と異なる環境に身を置くことで空気の存在に気づけるように、人の価値観もまた他の人と存在があってこそ明確に見えてくるものなのです。

コーチは目の前の人が「本当はどう生きたいのか」という問いを持ち続けている人です。コーチが焦点を当てているのは、内面的な価値観や生き方です。クライアントが自らの価値観に気づいたとき、それまで問題だと思っていたことが問題でなくなったり、全く異なった見方ができるようになったりします。単なる問題解決以上の変化をクライアントにもたらすことにつながります。

✖️ 問題解決と目標達成が至上命題
⭕️ 内面的な価値観や生き方に焦点

誤解3:立派なコーチがクライアントを導く

3つ目の誤解は、立派なコーチがクライアントを導くという考えがあるようです。コーチと名乗る方の中には、きらびやかな経歴を前面に出し「私にお任せください」といったスタンスの方も少なくないようです。

ビジネスの世界では、一点の陰りのない立派な経歴の人がもてはやされる風潮にあります。しかし、残念ながらそうした陰りを見せない人ほど、コーチには向きづらいと思います。なぜなら、コーチングの対話はときにとてもセンシティブで、心の弱さと向き合う時間でもあるためです。「何でもお任せください」と言い切る剛腕な人に、自分の心の弱さをさらしたいと思えるでしょうか。

コーチにとって一番大切なのは人間的であることだと思います。コーチに求められるのは立派な経歴などでは決してなく、自分自身の心の闇から光を見出した経験ではないかと思います。自分の弱さ、情けなさ、だらしなさと真剣に格闘した経験こそ、コーチになる必須条件だと思います。なぜなら、コーチはクライアントの中に光を見出す仕事だからです。自分の闇を乗り越えた経験があるからこそ、人の心の中にある光を見つけることができるのではないでしょうか。

強調してお伝えしたいことは、コーチが上、クライアントが下という考えは一切ありません。日本的な「上意下達主義」や「年上の人が無条件にエラい年功序列」の発想とは相容れません。コーチングが大前提とする関係は「上下ではなく横(フラット)」です。

日本的な職場内でコーチングが機能しないのは、そもそもの人間関係の基盤がフラットではないことが主な原因の一つだと考えられます。

コーチングは、コーチやクライアントのどちらかが一方的に主導するのではなく、二人で一緒に作る対話です。もしかすると、暗黙の上下関係が体に染み付いた私たち日本人の多くはまだこうした対話に慣れていないかもしれません。しかし、今後ますますフラット化する社会ではこうした対話が主流になっていくのでしょう。

✖️ 立派なコーチがクライアントを導く
⭕️人間的なコーチと一緒に進んでいく

3つの誤解を改めて、自分向きのコーチ探しを

ここまで3つの誤解をお伝えしてきました。改めて下に整理します。

✖️ 人を管理するマニュアル会話スキル
⭕️ 心を解放する内省的な対話のダンス


✖️ 問題解決と目標達成が至上命題
⭕️ 内面的な価値観や生き方に焦点

✖️ 立派なコーチがクライアントを導く
⭕️ 人間的なコーチと一緒に進んでいく


コーチングは単なるビジネスの会話スキルなのではなく、本質的な変化をもたらしうる対話です。コーチによっても力量は様々です。ぜひご自身に合ったコーチ探しをしてみてはいかがでしょうか。

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