ミッションとビジョン、3つの違いで簡単理解【具体例付き】

最終更新日:2022年6月12日

「ミッションとビジョンってどう違うの」。個人や企業の理念作りの仕事をしていると、クライアントの方からよくいただく質問です。

わかったようでわからないミッションとビジョンの違い。この2つの違いをしっかり押さえておけば、より迷うことなく進んでいくことができます。この記事ではこれまでのどんな説明よりもわかりやすく、かつ具体例も添えながらご紹介します。

ともに「根本的なものの考え方」

ミッションとビジョン、大きく括れば「理念」という点では同じです。理念というのは「根本的なものの考え方」という意味です。この2つともに「何を最高のものとするか」についての個人や企業の根本的考えを表明した言葉と言えるでしょう。

しかし、この2つの言葉はそれぞれ指しているものは異なります。残念ながら書籍などで「ビジョンの専門家」と名乗っている人も「実際はよくわからない」という人も見かけます。

私は新聞記者時代に多くの経営者を取材し、コーチに転身してからも企業理念や個人の理念作りに200時間以上携わってきました。そうするうちに、ミッションやビジョンについて型にはまった説明はあっても、噛み砕いた言葉で伝えられる人がほとんどいないことに気づきました。この記事を通じて、一緒に理解していきましょう。

日本語にピタリと当てはめづらい

そもそも、ミッションとビジョンは、なぜカタカナなのでしょうか。それは日本語にピタリ当てはめづらいというのが適切かもしれません。

ミッションはよく「使命、任務」と訳されます。ミッションの語源はラテン語で「送る」などを意味する mittere です。キリスト教の礼拝の場面で使われた言葉だそうで「神の言葉を送り届ける」と解釈されるようになり「伝道」の意味を表すようになったと言います。

語源通りに解釈すれば、自分自身の人生で「何を伝えていきたいのか」ということになるのでしょう。自分が人生を通じて最も伝えていきたいこと=使命であるという捉え方ができます。

一方でビジョンは、よく「未来像」「将来のありたい姿」と訳されます。Visionはラテン語の「見る」という単語に由来し、未来を見通す先見性のことを言います。ViewやVisualとも語源と同じくし、視野に関する意味合いです。これらのことから、ビジョンは未来の景色を指すものと言えるでしょう。

ただインターネットに転がる説明は、良くてもここ止まりです。これだけ聞かされても、わかったようでわからないモヤモヤが残るでしょう。この記事ではここから踏み込んで、わかりやすくお伝えします。

違い① 過去と現在を貫く想いか、実現したい未来か

ここからミッションとビジョンの違いをポイントを押さえてお伝えしていきます。

まず1つ目は時間軸の観点です。過去、現在、未来の中で、ミッションとビジョンはどこに位置するものと捉えるといいでしょうか。

ミッションは「過去に紐づくもの」とされます。使命を考える時には、過去の出来事や原体験を思い返すプロセスが欠かせません。自分の使命は、必ず過去の自分とつながっているからです。

ただミッションは過去にあるだけでなく、現在も貫いています。そのため、ミッションは過去と現在を貫く想いと言えるでしょう。

一方で、ビジョンは実現したい未来のことです。未来のありたい姿を表現した言葉です。

山登りの例えが、理解の助けになるでしょう。ミッションは「山に登る理由」を言い表したものです。ビジョンは、登り切った頂上から見える景色のことを指した表現と言えるでしょう。ミッションとビジョンは登山口と山頂くらい、見方の異なる表現なのです。

具体例を一つご紹介します。日清食品の創業者であり「カップヌードル」の発明者・安藤百福さんは、どのようなミッションやビジョンを持っていたのでしょう。

安藤さんのインスタントラーメン作りの原風景は、戦後の食糧難で、寒空の下、たった一杯のラーメンを食べるために闇市に並ぶ長い行列だったと言います。そこで「お湯があれば家庭ですぐ食べられるラーメン」の開発を決意し、さらにそれをより普及させていくために、カップ麺を発明しました。

安藤さんの書籍を読むと、ミッションは「ラーメンを、紙コップで手軽に」だったことが浮かび上がってきます。

ビジョンは何だったのでしょうか。安藤さんが食に携わろうと思った理由は「世の中を明るくしたい」という思いだったそうです。その思いが、後年の宇宙食の開発などにも繋がっていったのだと言います。

安藤さんのビジョンは「食を通じ、世の中を明るく」といった表現が考えられます。この思いは、現在の日清食品の企業理念にも受け継がれていることが見てとれます。

カップラーメンの父・安藤百福さんの例
ミッション:ラーメンを、紙コップで手軽に
ビジョン:食を通じ、世の中を明るく

違い② ブレない軸か、巻き込むメッセージか

ミッションとビジョンは、メッセージの向いている対象にも違いがあります。

ミッションはどちらかといえば「自分への決意宣言」といった意味があります。一方で、ビジョンはより多くの人が関わる公共性が出てきます。ミッションは自分のブレない軸に、ビジョンは相手や社会を巻き込んだメッセージと言えるでしょう。

例えば米大リーグを舞台に投打の二刀流で活躍する大谷翔平選手はどのようなミッションとビジョンを持っているのでしょうか。理念作りの専門家の観点から解釈すると次のような言葉が出てきます。

大リーガー・大谷翔平選手の例
ミッション)投打の二刀流でチームを勝利に
ビジョン)不可能に挑戦し、人間の可能性をひらく

私たちが大谷選手に熱狂するのは「二刀流」はもちろんのことですが、それによって今まで見たことのない可能性を見せてくれるからなのではないでしょうか。これまで不可能とされていた「エース 兼 ホームランバッター」を実現したことのインパクトは、野球界だけにとどまらず、人間の新しい可能性を開いたことに価値があるのではないでしょうか。

大谷選手の例をみると、ミッション以上に、ビジョンが人を巻き込むものと言えそうです。

違い③ 言葉のつながり重視か、イメージ優先か

3つ目の違いは、作り方についてです。ミッションとビジョンはそれぞれ作り方が少しずつ異なります。

ミッションの場合は、言葉をつなげて基本形を作ります。
<自分が大事にしたいこと>と<自分ができること>で<相手をこんな状態にする>が基本形です。

ビジョンはイメージ喚起を優先します。ミッションは周りの人を巻き込む言葉でもあります。聞いた人が、それを思い浮かべられるようにすることを重視します。そのために、コーチングのやりとりが効果的になります。

簡潔にいえば、ミッションはどちらかといえば言語優先の左脳的、ビジョンはイメージ優先の右脳的と言えるでしょう。ミッションとビジョン作りは、人間の持てる力をフル活用させた、全人格的の表現でもあると言えるでしょう。

「芸術は爆発だ!」で知られ、現在でも多くのファンのいる岡本太郎のミッションとビジョンは何だったのでしょうか。書籍や残した言葉を見ると、次のようなミッションとビジョンが浮かび上がります。

「芸術は爆発だ!」岡本太郎の例
ミッション:芸術を通じ、あらゆる権威と闘い、自由を貫く
ビジョン:人間を誇り、人類を解放する

ミッションは説得的であり、ビジョンはより共感的であるともいえそうです。

まとめ:ミッションとビジョンの3つの違い

ここまでミッションとビジョンの違いについて書いてきました。改めて整理していきましょう。

これからの時代は「共感する個がつながり合う時代」とされます。長いものに巻かれればいいという時代ではなく、一人ひとりがミッションとビジョンを持つ時代です。皆さんもぜひ考えてみてはいかがでしょうか。

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安倍大資(あべだいすけ)
自己理念コーチ、フルエール代表

新聞記者出身のプロコーチ(CPCC、Co-Active®︎コーチ)。日経新聞記者をしていた34歳の時に自分を完全に見失い、9ヶ月間うつ状態で過ごす。精神的どん底期でコーチングに出会い、自分の価値観で生き直すことを決意。2021年4月に独立しフルエール創業。

悩みを乗り越えた経験をもとに「仕事軸と理念を言語化しやりたいことを実現する」コーチングプログラムを提供している。

京都芸術大学大学院でコーチングを研究中。早稲田大卒。

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