価値観、なぜ今の時代に大事なの?〜「選べる時代」を生きる

最終更新日:2022年5月13日

仕事や生き方の選択に悩む人が増えていると言います。働き方の多様化や副業の解禁、インターネットによるスキル市場の拡大などで、私たちは仕事や生き方を広く選べるようになりました。令和は「選べる時代」とも言われます。

しかしどれほどの人が「選べる自由」を本当に自分で選んでいるのでしょうか。実際は、本当にやりたいのかどうかわからない仕事に日々追われている方が多いようです。社会的に成功しているように見えても、心にモヤモヤを抱えたまま働き続けている方は少なくありません。

選んで生きるためには「選ぶ基準」が欠かせません。選ぶ基準は、言い換えれば価値観とも言えます。「価値観が大切」とはしばしば聞くことですが、どうすれば本当に納得のいく自分の価値観を見つけることができるのでしょうか。価値観を持つことで、仕事や人生はどう変わっていくのでしょうか。

「私、本当は何やりたいんだろう?」

「本当は私、何がやりたいんだろう」。東京都内でコンサルタントとして働く佐伯加奈子さん(仮名、37歳)は最近、ふとこうした疑問が湧くようになりました。

大学卒業後、複数のコンサルティングファームで経験を積み、昨年コンサルとして独立・開業しました。「食に携わる経営者の相談役になりたい」という思いから、中小の食品メーカーとコンサル契約を結び、経営分析など日々慌ただしく働いています。

しかし、お金には困っていないものの、心のどこかで「本当にこれでいいのだろうか」という疑問がつきまとっています。「独立したけれど、会社で働いていた時と実際は変わっていない」という思いが湧き、最近は仕事から充実感を得られなくなっています。

仕事に熱意のある人が少ない日本

自分は本当はどうしたいのか。こうした悩みを抱える人の割合は他国に比べて、日本は非常に多いと言われます。国際的な世論調査会社が2017年に「熱意のある社員の割合」について調べたところ、日本はわずか6%と、調査した139ヶ国中132位と最下位クラスでした。さらに、やる気のない社員は7割、周囲に不満を撒き散らす無気力な社員は24%という数字が出ています。

人生や仕事の選択肢が急増

仕事や生き方に迷う人が近年特に増えている理由の一つとして、選択肢が増えていることがあげられます。少子高齢化に伴ういわゆる労働人口の減少を背景として、国は2016年に働き方改革を始めました。これにより長時間労働の是正や副業の解禁などが進みました。経団連も2019年に従来型の日本的な「新卒一括採用・年功序列、終身雇用」を見直す発言をしています。

さらにこうした動きに拍車をかけたのは、2020年以降の新型コロナウイルスの影響です。これによってリモートワークが当たり前になりました。ほとんどの人が未経験の働き方に否応なくシフトすることになりました。この2年で従来の「当たり前」があっという間に当たり前でなくなってしまいました。

仕事や人生の選択に悩む人の増加

こうした時代の流れの中で、仕事や生き方に迷う人は増えています。その具体的な根拠の一例として、心療内科の数の増加があげられます。

国の調査によれば、心療内科の数は直近の15年間で5割増えました。心理的に安定性を欠いている方が増えていることが見て取れます。

企業や組織はメンタルヘルスに力を入れています。新型コロナによって社会が一変したように先の見通しにくVUCA(ブーカ)と呼ばれる時代の中、経営者であっても社員であっても独立していても、迷いの多い時代に私たちは生きています。

経済性から人間性の時代へ

しかし立ち止まって考えてみると、選択肢が増えること自体は素晴らしいことではないでしょうか。一度就職したらずっと同じ会社で働き続けることが当たり前だった時代よりも、むしろ自分のライフステージに合わせて仕事を変えたり学び直したりできる方が、より豊かな社会に近づいているように思います。

これからの私たちの目指す社会について「ビジネスの未来」などの著作で注目を集めている著作家の山口周さんは「『経済性に根ざして動く社会』から『人間性に根ざして動く社会』への転換」を強調しています。「経済性から人間性への転換」がこの先の新しい社会の基本的な考えになると語っています

ただ「経済性から人間性」が大事だとわかっていても、なぜ私たちはそれがなかなかできないのでしょうか。それは私たち自身が「人間性を自ら選ぶ」ことに慣れていないからなのではないでしょうか。

人間性は価値観に表れる

そもそも人間性とはなんなのでしょうか。仕事モードの自分というよりかは、肩書きや役職などを外したその人のその人らしい自然体の姿と言えるのではないでしょうか。人間性が最も顕著に出るのが、その人の「価値観」だと思います。

同じ日本人であっても一人ひとり異なります。一人ひとりが自分の価値観を見出すことで、価値観の尊さを知り、そうすることで他者の価値観も尊重して生きていけるのではないでしょうか。

この「一人ひとり異なる価値観」というのは、旧来型の学校教育や硬直的な日本の会社システムにそぐわない考え方です。なぜなら、日本社会はとりわけ「みな一緒であることがいい」「出る杭は打たれる」といった旧来的な考えがいまだに社会全体にまとわりついているからです。しかし、価値観の大切さに気づいた人は、新しい時代の方へ自ら動き出しています。

まずは自分を知ることから

これからの時代は「共感し合う個人同士がつながる社会」とも言われます。共感でつながるために何よりもまず大切なのは、自分自身を知ることなのではないでしょうか。自分自身を知らなければ、どんな人とつながっていいかわからないからです。

自分自身を知るというのはつまり、自分の価値観を知るということです。価値観とは「あなたが仕事や人生で大事にしたいことはなんですか」という問いに対する答えといってもいでしょう。

人生における価値観とは、山歩きのコンパスのようなものです。コンパスをもたずに山に入れば道に迷い遭難するのと同じように、明確な価値観がなければ人生の方向性を見失いブレ続ける日々を送らざるを得ないでしょう。充実感を得られず深い喜びを感じられないまま、うつろな日々を重ねることは残念なことではないでしょうか。

誰もが自分の価値観を明確にすることができます。次回以降のコラムで、価値観の見つけ方などについてお伝えしていきます。

 

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安倍大資(あべだいすけ)
自己理念構築コーチ、フルエール代表

新聞記者出身のプロコーチ(CPCC、Co-Active®︎コーチ)。日経新聞記者をしていた34歳の時に自分を完全に見失い、9ヶ月間うつ状態で過ごす。精神的どん底期でコーチングに出会い、自分の価値観で生き直すことを決意。2021年4月に独立しフルエール創業。

悩みを乗り越えた経験をもとに「自己理念を作り一貫性のある人に確実に変わる」コーチングプログラムを提供している。

京都芸術大学大学院でパーソナルデザインを研究中。早稲田大卒。


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