【自分の人生つくるには】生きる視点を見出そう

最終更新日:2021年10月8日

コーチングの学びを進めようと、9月25〜27日にCTI(Co-Active® Training Institute)のオンラインコースに臨みました。8月から受講している計5コースの3番目で「バランス」というコースです。自分のコーチングに新たな視点をもたらしてくれた、濃密な学びの3日間になりました。

自分にとって大事な学びとなったのは、同じ出来事や物事に対しても、それをどう見るかによって見え方が大きく変わるということです。対象に対してどの視点に立つかによって、見え方だけではなく、自分の中に湧き上がる感情すら違うものになることを体感しました。「視点が変われば世界が変わる」と思い至りました。

守秘義務があるため、コースの詳しい内容について書くことはできません。ここでは、3日間の学びを踏まえて、視点を変えることによって誰もが人生を変えうるという、私なりの考えを伝えられたらいいなと思います。

年齢とともに変わる視点

私は山歩きが好きで小学生のころから20年以上続けています。そこで「山」を対象として視点について考えようと思います。

私が通った北九州の小中学校は山の麓にありました。教室の窓からは四季によって色合いが変わる山々が見え、春夏秋冬でその姿を変えていました。山を見ながらいつも「山頂が雲に隠れるのはどうしてなのだろう」とか「山の向こうには何があるんだろう」といったことを考えていました。山を通じて地形のでき方や気象などに興味が広がり、高校のときには地理を学ぶことが大好きでした。10代の私は山に対して「ふしぎだな」という視点で見ていたように思います。

20代になり、山は「鍛錬の場」に変わりました。大学1年生のときワンダーフォーゲル部で活動し、30キロほどのザックを背負って南アルプスの急峻な山々を一週間縦走したり、雪降りしきる冬山での合宿も経験しました。社会人になっても北アルプスや北海道の大雪山系を縦走したり、無人の荒野を100キロ近く歩くロングトレッキングにも挑戦しました。精神的にも肉体的にも負荷をかける「鍛錬」という視点で山を見ていたので、厳しい山に憧れをもっていました。

30代に入り、山に対して「安らぎ」という新たな視点が生まれました。今は静かな森の中でキャンプをすることに楽しみを感じています。テントを張って、特別何をするわけでもなく折りたたみ椅子に腰掛け、葉がこすれあう音や小鳥のさえずりを聞いていると、満たされるような思いがしてきます。夜に焚き火をしながらウィスキーをちびちびやる時間も大好きです。早朝、森に生気を吹き込むような明け方の光に心洗われる思いがします。山は次第に「安らぎの場」に変わりつつあります。

山に対しての視点の移り変わりは、次のようなイメージです。

3つの視点いずれも自分にとっては大切です。30代になった今も「安らぎ」という1つの視点だけでなく、ときに「鍛錬の場」であり「ふしぎ」という探究心を抱かせる場所でもあります。その時々で山に求めるものに応じて意識的に視点を切り替えていければ、山をより楽しめるのではないかと考えています。

コーチがクライアントとともに変える視点

この「視点を変える」という心がけは、コーチングにとってとても役立つスキルの1つだと知りました。なにか行き詰まった状況に対して、視点を変えることで新たな見方が生まれ、心理状態も大きく変わることを実体験として学びました。

コース中で印象的な場面がありました。仕事に悩みを抱えている方がクライアント役になり、数人のコーチが5分くらいずつ順々にコーチングをしていくという実習です。

あるコーチの順番になりました。歌や音楽が大好きな方でした。飛び跳ねるような元気のいい姿が画面に現れたとたん、場の雰囲気が明るいものに一変しました。さらにコーチは「好きな歌を歌ってみましょう!」とクライアントに誘いかけました。クライアントは一瞬戸惑っていたようでしたが、コーチとともに思い入れのある曲を歌い始めました。私には画面越しに2人がカラオケボックスにいるように見えました。場が変わったことによって、クライアントの心境が変わり、悩みに対する視点も変化していったようです。クライアントは、その後のコーチの問いかけに対して新たなアイデアを話していました。

そのコーチはクライアントの悩みに対して「こうすべきだよ」といったアドバイスをしたわけではありません。クライアントの気持ちに変化が起きたことで、クライアントの内側にあるものが自然に引き出されたように見えました。コーチの大胆な誘いが、クライアント一人では見えてこない視点を呼び起こすことを知りました。

病を経て変わる視点

病気をきっかけに人生観が大きく変わったという話をときおり耳にします。例えばうつ状態などの精神的な病が、自分の価値観を見直すきっかけになることがあると聞きます。私なりの理解では、人生観というのは「人生に対する視点」と言えるのではないかと思います。

私の友人の中にも、精神的な不調を経て芸術の世界に足を踏み入れた方や、安定した勤めをやめてフリーで活動している人が少なくありません。彼ら彼女らと話して共通して感じるのは、さっぱりした印象です。大切にしているものと、そうではないものがはっきりしているように感じます。譲れない何かがありそうだと伝わってきます。そうした方たちは、不調を機に自分自身を深く見つめ直す経験をしたのでしょう。自分の核となる「人生に対する視点」を見出せたからこそ、それまでとは異なる人生へと舵を切れたのだろうと思います。

私自身も精神的に深く沈んだ時期がありました。どん底の状況から脱しつつあったとき、精神科医の泉谷閑示さんに著作を通じて出会いました。泉谷さんはカウンセリングを通じ、うつ状態をへて人生を大きく変えた方を多く見てきたといいます。次の一文をご紹介します。

(完治した)その人たちに共通していたのは、うつ病の療養をきっかけに、大きく自分の人生を軌道修正された点でした。詳しく言えば、本人の基本的な価値観のところに革命的と言えるほどの大きな変化が起こり、そして、生き方が見直され人生も変わっていったということなのです」

「普通がいい」という病(講談社現代新書 p34,35)

うつ状態などの病はとても苦しいことです。できれば避けたいものです。しかし、苦しみの中にはその人とって重大なメッセージが込められている場合が多いそうです。不調が自分に伝えようとしているメッセージを受け取ったとき、価値観という「人生への視点」が大きく変わるのでしょう。後から振り返ると、病が自分らしい人生を生きる節目になったと言えるのかもしれません。自分自身の経験からもそのように感じています。

どの視点を選ぶかは自分次第

人生への視点を変えるということはどういうことなのでしょうか。

例えば、人生に対して「与えられた義務をこなす」という視点で見ていた人が、うつなどを経ることで「自分自身で作り上げるもの」と変わる場合があるかもしれません。また「周りに合わせて生きる」という視点を持っていた人が、あることを機に「やりたいことを思い切りやる」に切り替わることもあるでしょう。視点が変化することで、その人の心境が変わり、さらに行動も大きく変わるように思います。

今回の学びでは、視点自体に良い悪いはなく、正解不正解もないということを知りました。そして、自分の視点は自分で選べることも学びました。「視点は自分で選べる。選んだ視点で人生を作っていける」。これはある悩みを長年抱えていた私にとって強烈なインパクトのあるメッセージでした。私自身の心に巣食うジメジメしたわだかまりが、陽のもとにさらされていくような思いがしました。

視点自体に良い悪い、正解不正解はありません

日本は同調圧力が世界随一で高い国だと聞きます。同調圧力というのは、自分なりの理解では、特定の視点を強要されるという言い方ができるのではないかと思います。世間体という日本ならではの閉じた空気が、学生や社会人など世代を超えていまだに多くの人を縛り付けているように私には感じます。私はそれが大嫌いです。

私は日本で日本人としてコーチをする大事な役割に、世間体を振り払うことがあると思っています。コーチが向かい合うのはあくまでクライアント個人の思いです。世間の目が入り込んではいけない、個人の聖域といってもいいのではないかと思います。個人の思いを限りなく尊重し、その思いを最も生かせる視点をクライアントとともに探していきたい。コーチをめざす私自身の願いです。

自分自身の中にある視点を見出そう

このコースの最終日、ある曲が話題に上がりました。中島みゆきさんが作詞作曲をしてご自身やTOKIOが歌っている「宙船」です。僕も大好きな歌のひとつです。「宙船」といえば腹の底に響くような重低音のメロディーとともに、次のフレーズが思い浮かびます

その船を漕いでゆけ おまえの手で漕いでゆけ
おまえが消えて喜ぶ者に おまえのオールをまかせるな

今回学んだことからめいいっぱい想像すると、ここでいう「船」とは「自分の人生」なのだと思います。そして「お前の手」というのは「自分自身が選んだ視点」と言えるのではないかと思います。曲中にはこのフレーズが5回繰り返されます。他人の視点ではなく、自分自身が選んだ視点で生きていけという中島さんの心からの叫びのように聴こえてきます。

私たちは日々、マスコミや上司、親や教師など、なんとなく立派そうに聞こえる人の声に囲まれて過ごしています。その「なんとなく常識っぽい」声を船に、自分を乗せて生きていくことは楽かもしれません。自分で漕がなくていいから何の力もいりません。でも、その船は果たしてどこに向かっているのでしょうか。誰だかわからないオールのこぎ主は「おまえが消えて喜ぶ者」かもしれません。そうだとしたら、何と恐ろしいことでしょう。

自分が望む人生は自分にしか作れません。それには、人生に対する自分自身の視点を見つけることが大事なのだろうと思います。私は、それは誰にでもできることなのではないかとも思います。大切なことは世間体にまみれた誰のものかよくわからない視点を一度捨て去って、自分自身の中にある視点を見出すことだと思います。

一人ひとり違う自分を生かす視点を、クライアントとともに探していけるコーチになりたい。そして私自身も自分を生かせる視点で生きていきたい。豊かな学びの3日間を過ごして今そう感じています。ともに学んだ28人のコーチの仲間に深く感謝します。

※内容は「コーチング・バイブル」(東洋経済新報社)に記載されているものに限って取り上げました。

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安倍大資(あべだいすけ)
コーチ・執筆家(元・日本経済新聞記者)
フルエール代表

日経新聞で12年間(2009〜21年)記者として働く。各界のリーダー1000人を取材。300万人の読者に3000本の記事を執筆してきた。

20代前半から約10年間メンタル面の好不調の波に悩む。33歳の時に9ヶ月うつ状態に。人生に行き詰まり、価値観を徹底的に見つめ直すことで長年の悩みを解消した経験をもつ。「人は本当の願いに気づくことで変われる」という実体験からコーチに転身した。

中小経営者向けのクレド構築プログラムを主宰。年30社ペースで、共感される経営理念作りに取り組んでいる。


早稲田大学商学部卒、北九州市出身。

詳細なプロフィール
個人のHP

7月からバンライフで日本一周の旅をしています。仕事をしながらどのような旅をしているのかお伝えします。
10月18日に福島県で講演させていただきました。「300万人から共感される一言づくり〜『ブレない私』になる魔法のカード」をテーマに、マイクレドの作り方をお伝えしました。ライブ配信とあわせて100人以上の方にお集まりいただきました。